2010年3月25日木曜日

刃型の刃材料

新しい刃材料が届きました。


ちょっと間抜けなバイキングの顔が商標のMartin Miller Viking(Made in Austria)の刃です。
いわゆる「スウェーデン鋼刃型」という曲げ刃型を作るための刃材料です。スウェーデン鋼という割には製造はオーストリーです。もともとスウェーデンのサンドヴィックという鋼材メーカーが曲げ刃型という方式を考案したからそう呼ばれているようです。私の持っている刃曲げ機(フットベンダー)もサンドヴィック製。しかしサンドヴィックは5年前に刃型材料から撤退しました。世界的に見ても刃型市場のパイは大きくないようです。現在、スウェーデン鋼刃型を作る日本の刃型屋さんですと、マーチンミラーとボーラー(どちらもオーストリーのメーカー)の刃を使っているようです。おそらくHai Sharkという台湾メーカーの刃材料を使っているのはウチぐらいのものだと思います。



75メーターのコイル巻で刃が梱包されております。
刃と言っても、焼きが入ったバネ鋼材ですので、専用のケースに入れてからアンワインドしないと、大変なことになってしまいます。

今回の刃は19mm高 x 2.0mm厚 BEPというタイプです。マーチンミラーの規格表を見ると、、、BEPなんて載ってないぞ、、、まあ、いいや。

規格表ページを見ていただくとおわかりいただけると思いますが、刃先の形状がタイプによって違います。何でもないことのようですが、刃先形状はとても重要な意味を持っております。
革の場合、おそらく一般的にはBEというタイプの刃が多く使われていると思います。特に刃の指定をしなければ、まずだいたいBEで刃型を作ってきます。革の銀面から抜くと、カット面がなで肩になるタイプです。このカット面のなで肩形状が革製品に高級感を出します。なぜ「なで肩」に切れるのかというと、そうなるように考えて刃先形状が作られているからです(たぶん)。
革包丁ではこういうカットは出来ません。カット面のエッジが立ってしまいますので、ヘリ落としという道具でエッジを丸くしてやる必要があります。

BEKという刃先形状は、何に使うかというと、硬くて厚いものを抜くときに使います。BEで厚いものを抜くと、真っ直ぐにカットできないからです。微妙に末広がりにカットされてしまいます。あとBEで5mm以上の厚くて硬いものを抜くと、形状によっては刃型に抜いたものが噛みこんで抜けなくなる事が多いです。

刃型(というか刃材料のメーカー)は立派です。用途に応じて、これだけ多くのタイプの刃型をラインアップしているわけです。

今回BEPというタイプもBEKに近いタイプです(のはず) 。ケースの底部分(厚くて硬い)を抜くためにわざわざ買ったわけです。しかも販売単位は75メーター1巻きです。カメラケースの底用の刃型ぐらい刃型屋に頼んでも1個2000円しないと思います。75メーターの刃材料と収納ケースを買ったら50000円は下らないです。小学生の算数が出来ればどちらが得かは一目瞭然。普通刃型屋に頼むだろ、、、。

私は一体何をやっているんでしょうか?

変なところに資金をつぎ込んでいますけど、一応私なりの理由があるのかもしれません。いや、たぶんある。あるに決まっている。

それはおそらく、仕事を通じて自分がスキルアップしたい、だと思います。
ただ革製品を作ってたくさん売るだけの人生よりも、刃型も曲げられるし、押し型も自分で三次元設計して、自分のところで削り出したりできる人生の方が、おそらく面白みが数倍あると私は思います。何と言っても、チャレンジすることがいっぱいあって退屈しませんし。

希にですが、 自分でも刃型を作ってみたいという革職人さんから問い合わせがありますが、30万円ぐらい用意すれば、入門セットぐらいの刃曲げの設備は入手可能だと思います。溶接が必須なのでコンクリート打ちの土間でないと出来ません。西日本ですと神戸湊川のあたりに刃型業界の名物男みたいな人(ブローカー)がいて、その人に頼めば中古でも新品でもベンディングマシンからその他の工具、刃材料から一通りのものが揃います。

その人との連絡方法はというと、うーん、本気でやるつもりなら、どうやってその人を探せばいいか、知恵を絞れば方法が考えつくと思います(Webサイトはありません)。