2016年7月22日金曜日

焼き入れ ハンドクリッカープレス 試作の続き

先日の投稿(ハンドクリッカープレス 試作)続きで、設計寸法の悪いところを直して、材料手配をして再度作るわけですが、カムのように摩耗する部品には焼きを入れないとよろしくない、ということで、焼き入れ業者に持っていきました。焼きとかは素人がやっても上手く行くようなものではないのです。



その焼き入れ屋ですが、実は27年ほど前に高周波焼き入れ工場でアルバイトを半年ぐらいやったことがあるのです。そこに持っていってやってもらいました。何でも経験しておくと後々役に立つことがある、という良い例です。普通の生活をしていて高周波焼き入れなどというものを知る機会は全くありません。

27年前の「元ツッパリ」という感じのアニキが、今では禿げ上がり、風格も出て、その会社の立派な社長さんになっていました。年月というものを感じさせます。



左が焼き入れ前、右が焼きを入れた後。
生の鉄だと、釘の先でひっかけば傷がついてしまう程度の硬さですが、焼き入れをした後はガッツリ硬い、釘なんかでは刃も立ちません。

私も当時、何も考えずに簡単な焼き入れをやっていただけなので、全然覚えていませんけど、高周波焼き入れだと、表面だけ綺麗に焼きを入れる事が出来ます(たぶん)。上の写真でも青い筋の内側は生鉄のまま。正直、摩耗するのは表面だけですので、これで充分なのです。一部に焼きを入れるだけなら全体は歪みにくいと、そういうわけです。

焼き入れというイメージは、たぶん皆さんガスか何かで時間をかけて真っ赤になるまで炙って、水か油にジュワッと入れて冷やすぐらいのイメージでしょうけど、高周波焼き入れはものすごく早く、これぐらいの焼きを入れるのでしたら、当時を思い出すと、熱線みたいなのに当てて素早く動かす感じで、たしか10秒ぐらいだった気がします。この程度の焼きを入れるなら、お値段も全然高い物ではないです。

そういえば当時、地下鉄を掘るモグラみたいな機械の巨大な刃なんかにも焼きを入れていました。この刃が桜通線を掘っているのか、と感心した覚えがあります。

当時はこんな事をやっても将来、絶対に役に立たないと思っていましたけど、案外役に立つ日がやってきたと、そういうお話でした。しかしながら世の中には様々な専門化された業種があり、焼き入れというのはスポットライトが当たるような華やかな仕事ではないですが、大概どんな機械にも焼きが入った部品が入っており、我々の目に見えないところで重要な役割を担っているのだと、あらためて思ったのでありました。